田中達也が選んだ「みんなの冬風景写真」

 
写真家・田中達也先生

田中達也先生

愛知県生まれ。医療ソーシャルワーカーとして精神障害者のケースワークに従事。その後、自然写真家として独立。身近な自然から風景・オーロラと幅広いジャンルを手がけ、繊細で力強い独創的な作風を特徴とする。オーロラと風景を組み合わせた一連の作品は海外からも高く評価され、カメラ誌・アウトドア誌・カレンダーなど多くの媒体に作品を発表している。
日本写真家協会・日本自然科学写真協会 各会員

それでは、今回選んだ応募作品を見ていきましょう!

  • ひでごんさん「あなたに届けたいものがある」
  • もちさん「凍てつく朝」
  • seijiyoさん「大雪」
  • 山オヤジさん「氷の羽毛」
  • ひゅ〜むさん「富士山、冬の大三角形、カノープス」
  • apogon2さん「湖面の雪樹」
  • まさヒコさん「冬石鎚天狗岳」
  • andromeda502さん「翔春」

※作品をクリックすると講評を閲覧できます。

冬の風景写真の投稿募集も、今回が3回目。回を追うごとに力作・秀作が集まりました。表現力やシャッターチャンスの差こそありますが、どれも撮影者の視点の先に内容があり、緊張感のある作品が集まりました。冬景色だからこそ見つけるシーンの数々に感動しました。全3回を振り返ると「ただ撮っただけの冬景色」から「見る人に作者の意図が伝わる冬景色」へと変化していると感じました。さぞかし作品選びにも迷いや苦悩があったのではないでしょうか。それでは最終回の作品を見ていきましょう。

郵便配達への使命感が伝わる冬の情景。

ひでごんさん「あなたに届けたいものがある」

ひでごんさん「あなたに届けたいものがある」

EOS 50D・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F5.6・1/800秒・ISO200・+2/3補正・WBオート

大粒の雪が降りしきるなか、足下を取られながらも懸命に配達する郵便屋さん。
的確な距離感で、とても印象深く撮られた作品です。一見すると露出不足と思われるかもしれませんが、この露出選びによって沈んだグレートーンになり、厳しい生活環境がひしひしと伝わってきます。さらに作品につけられたタイトルが抜群です。配達員のひたむきな使命感までが伝わってくるようです。

田中達也

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冬の風景写真 知っておきたい「新常識」

日陰と日向のバランスが魅力的な作品。

もちさん「凍てつく朝」

もちさん「凍てつく朝」

EOS 70D・EF24-105mm F4L IS USM・F11・1/250秒・ISO400・+1/3補正・WBマニュアル

フロストフラワーの点在する氷上をテクテクと歩く白鳥。限られた場所の極寒期でなければ撮影できないシーンです。日陰と日向を4対1の割合で構成され温度差を感じる画面構成です。白鳥の足の運び具合もタイミングがよく動作が伝わってきます。それだけに白鳥が中央に位置している点が気になります。シャッターを押すのをもうワンテンポ遅らせ、少し右に移動したタイミングが理想と思います。

田中達也

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降りしきる雪の動感で表現した冬の鉄道風景。

seijiyoさん「大雪」

seijiyoさん「大雪」

EOS 80D・EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM・F4.5・1/60秒・ISO800・+2/3補正・WBマニュアル

登山鉄道がすれ違うためにホームで待機しています。そこへトンネルの奥から対向列車が近づいてきます。降る雪のなかでチャンスを射抜いた作品です。列車に動感がないことが残念ですが、それを補っているのが降雪です。できればシャッター速度を一段遅らせ降雪のブレを強調すれば、動感が強調されより作品として深みの増した演出になったでしょう。

田中達也

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冬の鉄道写真 ドラマチックな名作を見る

豊かな諧調で描き出した冬の風景。

山オヤジさん「氷の羽毛」

山オヤジさん「氷の羽毛」

EOS 60D・EF17-40mm F4L USM・F5.6・1/1250秒・ISO100・WBオート

羽毛のような雪のクローズアップとアウトフォーカスされた遠景描写。ハイコントラストな光線状態ですが、ハイライトからシャドーまでを豊かな諧調で描写されています。画面のひとつひとつに目が行き届いた秀作で、作者の技量の高さを物語っています。前景クローズアップ部分にへこんでいる穴が開いています。それが何なのか、少々気になりました。

田中達也

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冬の代表的な星座と富士山の風景の融合。

ひゅ〜むさん「富士山、冬の大三角形、カノープス」

ひゅ〜むさん「富士山、冬の大三角形、カノープス」

EOS 5D Mark III・EF24-70mm F2.8L II USM・F2.8・10秒・ISO6400・WBオート

富士山を遠景に据え、冬の代表的な星座をフレーミングしています。ソフトフィルターの効果で見事に星々が浮かび上がりました。地上に目を移せば、低空の光がグラデーションとなり、温もりを感じさせます。構図的には前景のシルエットの割合がもう少し欲しいところ。
タイトルにあるカノープスは飛行機の光跡下の星です。固有名詞だけで綴るタイトルは、一般にはわかりにくいので一考したいところです。

田中達也

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星景写真の3ポイント撮影テクニック

日本画のように幽玄な冬景色を浮かび上がらせた。

apogon2さん「湖面の雪樹」

apogon2さん「湖面の雪樹」

EOS 5D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・F4.5・1/50秒・ISO100・+2/3補正・WBマニュアル

冬の訪れの時期でしょうか。まだ凍っていない湖面から伸びる木立が、シンメトリーに映り込んでいます。こうした場面ではシンメトリーを意識して木立のラインを中央に寄せがちですが、作者は下方に寄せました。それにより奥行きが強調され、安定感のある構図が成功しています。さらに低彩度の色調のなかで静かに降る雪に目線が誘導されます。見入ってしまう日本画のような作品です。

田中達也

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冬山の威容に迫った山岳写真。

まさヒコさん「冬石鎚天狗岳」

まさヒコさん「冬石鎚天狗岳」

EOS 6D・EF24-70mm F4L IS USM・F11・1/1600秒・ISO400・+1/3補正・WBマニュアル

悪天候のなかで晴れ間を待機して撮影した、シャープで美しい山岳写真です。
晴れ間からのぞく稜線に連なる初期の樹氷群に美しさを感じます。そしてこのシーンの素晴らしさを演出しているのが左右に割れた霧の存在です。誰もが手軽に撮影できるシーンではありませんが、構図にまとまりがあり、青空から白銀の稜線へと続く色彩的な諧調も見応えがあります。ドラマチックな一瞬を切り取った判断は見事です。

田中達也

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ツグミの羽ばたきを見事なタイミングで捉えた作品。

andromeda502さん「翔春」

andromeda502さん「翔春」

PowerShot SX610 HS・F6.9・1/500秒・ISO1600・WBオート

雪をかぶり、たわわに実を付けたピラカンサから2羽のツグミが飛び立った一瞬です。高速シャッターでダイナミックに羽ばたくツグミの一瞬を写し止めています。実をついばむシーンはよく見かけますが、羽を広げた一瞬を捉えることは、たとえ連写でも難しいシーンです。もう少し明るく補正すれば、一段とツグミが目立ちます。左上の鳥が気になりますが、仕方ありません。

田中達也

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