冬の「ドラマ」を撮ろう

冬の「ドラマ」を撮ろう

  • 講師:田中達也(写真家)
  • 第1回〈月1回・全3回更新〉
写真家・田中達也先生

田中達也

愛知県生まれ。医療ソーシャルワーカーとして精神障害者のケースワークに従事。その後、自然写真家として独立。身近な自然から風景・オーロラと幅広いジャンルを手がけ、繊細で力強い独創的な作風を特徴とする。オーロラと風景を組み合わせた一連の作品は海外からも高く評価され、カメラ誌・アウトドア誌・カレンダーなど多くの媒体に作品を発表している。
日本写真家協会・日本自然科学写真協会 各会員

ヒント3冬の被写体は「足元」に隠れている!

冬は足元にカメラを向けてみると、普段の目線で見る風景とは違った光景や不思議な被写体の発見があります。
足元を見つめれば、冬の撮影ネタには困ることがありません。まずは被写体の発見に意識を傾けましょう。

「足元」の被写体:作例「落ち葉の薄霜」

撮影データ:EOS-1Ds Mark II・EF70-200mm F2.8L IS USM・F16・0.6秒・ISO160

撮影地:長野県 志賀高原

落ち葉が積もったところに薄霜が降りると、フォトジェニックに変身します。
こうした薄霜は日が当たるとすぐに溶けてしまいます。撮影チャンスは日の出前の早朝。
都心部でも公園や街路樹のある道路沿いで見つけることができますよ。

「足元」の被写体:作例「橋の上からの光景」

撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF70-200mm F2.8L IS USM・F16・1/10秒・+1/3補正・ISO100

撮影地:北海道美瑛町

雪景色の撮影に出かけると、ついつい道路の近くでの撮影が多くなります。
道路沿いでの撮影では、橋の上から下をのぞいてみるのも一案です。
小さな橋でものぞき込むことで、通常目線とは違った光景を見ることができます。

「足元」の被写体:作例「プリズム現象」

撮影データ:EOS-1Ds Mark II・EF70-200mm F2.8L USM + EXTENDER EF1.4×・F5.6・1/2500秒・-2/3補正・ISO100

撮影地:新潟県胎内

逆光の雪面に宝石のようなきらめき。雪の結晶が太陽光を屈折して輝く「プリズム現象」です。
この光を捉えるコツは、露出のコントロール。露出オーバーでは光の色が飛びやすくなるため、
雪面がグレーに写るぐらい露出アンダーにするとよいでしょう。

鳥の羽毛のような霜
雪の結晶状の霜

撮影データ(左):EOS 5D Mark II・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・F10・1/400秒・-1補正・ISO100

撮影地:長野県諏訪市

撮影データ(右):EOS 5D Mark II・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・F10・1/160秒・-1補正・ISO100

撮影地:長野県諏訪市

霜とは、細かな氷の結晶の集まりです。クローズアップで撮影すると、
鳥の羽毛や雪の結晶状になったものなど、自然の造形美を発見できます。
息で溶けてしまうほどデリケートなので、徐々に距離を縮めて撮りましょう。

「足元」の被写体:影に注目した作例

撮影データ:EOS 5D Mark II・EF24-70mm F2.8L USM・F14・1/250秒・-1補正・ISO100

撮影地:長野県 霧ヶ峰高原

広い雪原で風景をねらうと、アクセントがなく漠然とした絵柄になりやすいことがあります。
そんなときは影に注目します。晴れた日の木立の影はコントラストが高く、雪面に映えます。

ヒント4冬の「透明感」を撮ればキレイな写真に!

冬の寒さ冷たさを感じさせる、澄みわたる空気感や乾いた空気感。色彩としては透明ですから、本来は写真には写りません。そこで透明な空気感を感じさせる被写体を探します。

冬の「透明感」:作例「湖畔の朝焼け」

EOS-1Ds MarkⅡ・EF70-200mm F2.8L IS USM+エクステンダーEF1.4×・F16・1/6秒・-1補正・ISO100

福島県 裏磐梯高原

冬の静寂な空気感を表現したくて、湖畔で朝焼けの映り込みをねらいました。
岸辺の雪も湖面も澄み渡り青く同化し、不ぞろいな細木が不思議なリズムを奏でています。
ポイントは2色のコンビネーション。朝焼けのマゼンダ色が、彩りを与えてくれました。

冬の「透明感」:作例「雪が積もった氷瀑」

撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF70-200mm F2.8L IS USM・F16・1/10秒・+2/3補正・ISO100

撮影地:長野県高山村

氷瀑に雪が積もり、落下する滝の水が少しずつ融かそうとしています。
にごりのない乳白色となって無垢な透明感を感じさせてくれます。
透明なシロップをかけた「かき氷」のようではありませんか?

冬の「透明感」:作例「渓流の水面」

撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF70-200mm F2.8L IS USM・F13・1/20秒・+1/3補正・ISO100

撮影地:福島県 裏磐梯高原

冬晴れの午後に訪れた渓流。その一角で見つけた透明感を感じさせる水面です。
流れの中央付近が揺らめき、向いの林を投影しています。
澄みわたる冬の空気感による透明感を感じさせる光景です。

冬の「透明感」:作例「氷のオブジェ」

撮影データ:EOS-1Ds Mark II・EF70-200mm F2.8L IS USM・F16・0.3秒・+1/3補正・ISO100

撮影地:岐阜県下呂町

崖からしたたり落ちる水が岩の上で凍ってできた、まさに氷のオブジェ。
透けて見える奥には、きれいな形のまま落ち葉が閉じ込められていました。
冬の撮影ではこうした思いもよらない光景に出逢うことがあります。

写真家 田中達也先生

ここがポイント!

  1. 1. 朝の光の変化が冬景色のドラマをつくり出す!
  2. 2. 氷の世界を見つけてイメージを広げて撮ろう!
  3. 3. 冬は足元の自然に目を向けてみよう!
  4. 4. 冬らしい水や空気の透明感を表現してみよう!

『冬の風景写真は、撮りたいものを発見するセンスで決まる!』

冬の風景写真講座の第1回、いかがでしたか。とくに初心者の方は、冬の被写体を見つける目を養うことが大切です。直感的に見つけてスナップ写真的に素早く撮影する方法もよいでしょう。気になった冬の被写体にたくさんカメラを向けて「撮影経験値」をレベルアップしてください。

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