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アップで撮るには1000mm程度の焦点距離が欲しい
太陽・地球・月が一直線に並んだとき、地球の影に月が入り込んで「皆既月食」が起きることはご存知でしょう。そのとき地球の影の中は真っ暗ではなく、大気を通ってやってきた赤い光が含まれています。皆既月食の月が赤いのはそのためです。
皆既月食をアップで撮影するには、焦点距離でフルサイズ換算1000mm以上が欲しくなります。しかし、なかなかそうはいきませんから、もう少し短い焦点距離の望遠レンズや天体望遠鏡で撮影し、トリミングしてもよいでしょう。
EOS 5Ds・天体望遠鏡使用(口径76mm・焦点距離560mm)・Mモード(4秒)・ISO800 ※焦点距離約1200mm相当にトリミング
撮影地:米国・ワイオミング州

ホワイトバランスは固定にすると皆既月食の赤みを表現しやすい
皆既月食を欠けはじめから終わりまで一定間隔で撮影し、天文シミュレーションソフトと照らし合わせて合成処理すれば、「地球の影」を再現できます。地球の影は普段見ることができず、皆既月食のときに月がスクリーンの役割を果たしてくれるのです。このような撮影では300mm程度の望遠レンズでも楽しむことができますが、できれば赤道儀を用いて追尾しながら撮影しましょう。またホワイトバランスは「オート」ではなく「太陽光」や「マニュアル」に固定しておくのが無難です。
EOS 60Da・フィールドスコープ使用(口径90mm・焦点距離500mm)・Mモード(F8・1/500秒~4秒のカットを合成)・ISO100
撮影地:ミャンマー・バガン

青みがかった薄明の空に浮かぶ月食も撮ってみよう
月食にもさまざまなケースがあります。「部分月食」のまま皆既月食にならずに終わることもありますし、皆既月食になる前に沈んでしまったり、皆既月食が終わってから昇ってきたりすることもあります。この写真のように薄明中の青みが残った空での部分月食も美しいものです。
部分月食の露出は、半分程度までしか欠けなければ満月と同じくらいで撮影できますが、半分以上欠けてくると増やす必要があり、皆既になるとかなりの露出が必要になります。
EOS 60Da・EF24-105mm F4L IS USM・Mモード(F8・0.7秒)・ISO100
撮影地:北海道札幌市
ポイントまとめ
月が地球の影に入る月食は、平均的には1年に1度以上の頻度で起きますが、月食が起きているとき夜の地域でしか見られません。月が地球の影に完全に入り込んだ皆既月食のときには、月は地球の大気を通過した赤い光で照らされ、独特の赤味を帯びた色合いとなります。
1)アップで撮るには1000mm程度の焦点距離が欲しい
2)ホワイトバランスは固定にすると皆既月食の赤みを表現しやすい
3)青みがかった薄明の空に浮かぶ月食も撮ってみよう
写真・解説 中西昭雄