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アップで撮るなら超望遠レンズや天体望遠鏡、赤道儀を使おう
月が太陽をすべて覆い隠す「皆既日食」では、黒い太陽のまわりを普段は見ることのできない「コロナ」がとり巻いている様子が観察でき、薄暗くなった空には明るい星も輝いています。迫力あるコロナを撮影するには、フルサイズ換算で500mm以上の望遠レンズか天体望遠鏡があるとよく、できれば「赤道儀」を用いて追尾しながらの撮影をお勧めします。また、コロナは内側と外側で輝度差が非常に激しく、段階露光したうえで階調拡大する、いわゆる「ダイナミックレンジ拡大」が効果的です。
EOS 6D・天体望遠鏡(口径76mm焦点距離560mm)使用・Mモード(1/25秒~4秒)・ISO100 ※階調を拡大するために合成
撮影地:オーストラリア・クイーンズランド州

広角〜標準レンズで「日食の全経過」を追ってみたい
コロナの撮影は望遠レンズの出番ですが、広角レンズを用いて「皆既日食の全経過」を捉えるのもよいでしょう。このような作品はフイルム時代には「多重露光」という手法を用いて撮影しました。現在は1枚ずつ撮影し、後で合成処理をおこなえばよいのです。肝心なのは一定の間隔で撮影すること、部分日食の段階は濃度の高い専用のNDフィルターを用いること。そして皆既のときは忘れずにNDフィルターを外し、皆既が終わったらまた装着することです。
EOS-1D X・EF16-35mm F2.8L II USM・Mモード(F8・1/250秒~4秒 欠け具合と太陽高度に合わせて露出変更)・ISO100・ND100000フィルター使用(太陽が昇った最初のカットと皆既日食時以外)
撮影地:オーストラリア・クイーンズランド州

部分日食や金環日食の撮影には専用の減光フィルターを使おう
「金環日食」も珍しい天文現象で、2012年には日本の多くの地域で見られました。金環日食は月が太陽を全部覆い隠すことができず、太陽がリング状に見える部分日食の一種です。そのため撮影には露出倍数が1万倍から10万倍という、非常に濃度の高い太陽撮影専用のNDフィルターが必要です。これは皆既日食のときや、部分日食を撮影するときも同様です。太陽の撮影では、肉眼で直接太陽を見てしまうと眼を傷めるため、充分な注意が必要です。
EOS 5D Mark III・天体望遠鏡(口径120mm・焦点距離1350mm)使用・Mモード(1/320秒)・ISO100・ND20000フィルター使用
撮影地:山梨県北杜市
ポイントまとめ
太陽と月が織りなす天文現象、日食。丸い太陽が月によって欠けてゆく様子は、心躍るダイナミックな天文現象ですが、観察や撮影には眼を傷めないよう注意が必要。太陽が全部隠される皆既日食は昼間でも暗くなり明るい星が輝く、とても神秘的な光景となります。
1)アップで撮るなら超望遠レンズや天体望遠鏡、赤道儀を使おう
2)広角〜標準レンズで「日食の全経過」を追ってみたい
3)部分日食や金環日食の撮影には専用の減光フィルターを使おう
写真・解説 中西昭雄